診療のご案内 / 検査Penn Hip(ペンヒップ)検査
公開日:2006年12月13日
最終更新日:2020年3月10日
- 客観的に股関節の緩みの程度を評価する特殊なレントゲン検査です
- 股関節の緩みの程度を知れば、股関節形成不全(Hip Dysplasia)かどうか判明します
- 検査結果から、股関節形成不全を発症・悪化させない適切なアドバイスができます
- 股関節形成不全は遺伝性疾患なので、繁殖に適しているかどうかの判断材料となります
日本で人気のある大型犬(ラブラドールレトリバー、ゴールデンレトリバー、バーニーズマウンテンドッグなど)には先天的に股関節の緩みが強い動物が多く、年齢を重ねるごとに、変形性関節症を生じ、痛みを引き起こします。この病気を、股関節形成不全(Hip Dysplasia)といいます。日本ではラブラドールの46.7%に股関節形成不全が認められたと報告されている(2003年. 日本動物遺伝病ネットワーク調べ)ように、特定の犬種では高率にこの病気を発症します。

股関節形成不全の症状としては、以下の2つのタイプが代表的です。
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1)成長期(4カ月~12カ月)に発症
- 起立・お座りに手間取る
- 階段の上り下りを嫌がる
- 長時間運動した後に足を痛そうにする
- 症状は緩和、悪化の繰り返し
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2)成犬期に発症
多くの飼主様は、発症するまで股関節形成不全であると気づいていません
- 変形性関節症を発症し、慢性的な痛みを伴う
- 症状は基本的に次第に悪化
股関節形成不全の多くは遺伝的要因です。そのため、この病気で苦しむ犬を増やさないために、股関節形成不全の犬を繁殖に用いることはお勧しません。海外では、古くからレントゲン写真の股関節評価による繁殖動物の選択を行っており、現在、股関節形成不全を持つ動物を大きく減少させることに成功しています(例えば、スイスでは15年間で、ラブラドールの股関節形成不全の割合が16→3%に低下しています)[1]。ただし、繁殖の明確なルールがない日本においては、海外と比較して股関節形成不全を持つ犬が多い傾向にあります。日本においても、繁殖を検討される方が、この点に留意していただけることを切に願います。
股関節形成不全は遺伝的要因の影響が強いですが、環境要因である過剰なカロリー接種による肥満も発症や悪化に影響します。そのため、股関節形成不全の遺伝的要因を持つ動物は、早期にPennHip検査を受け(4か月齢から検査可能です)、股関節の状態を把握することで、肥満にならないような生活習慣を早い段階から開始することができ、将来の発症や進行をできるだけ抑えることが可能になると考えます。
当院はPennHip認定資格者がおりますので検査が可能です。ただし、検査は鎮静が必要になりますので予約が必要です。ご希望の方はあらかじめ、当院までご相談ください。
参考文献
- Ohlerth S et al. Prevalence of Canine Hip Dysplasia in Switzerland Between 1995 and 2016-A Retrospective Study in 5 Common Large Breeds. Front Vet Sci. 6: 378, 2019.